★大菩薩嶺(だいぼさつれい)
基本データ:大菩薩嶺(標高)2056.9m(場所)山梨県甲州市塩山(コース)上日川峠・大菩薩嶺・石丸峠コース(標高差)約500m(総距離/時間)約8.7q/5h(備考)日本百名山
いうまでもなく富士は日本一の山、百六十数キロメートル離れた高妻山から運よく、遠く、小さく見えた時、あらためて富士山の高さを感じました。それから近くで見てみたいと思うようになった時、青春時代に登りたいと思いながら機会を得ることができなかった山梨県の大菩薩峠が頭をよぎりました。調べてみると大菩薩峠は、長野市から日帰り可能な山なのです。
山の名は大菩薩岳で「嶺」という字をあてて「とうげ」と読み、以前は大菩薩峠を指していたそうです。今は、最高峰を「大菩薩嶺」として「れい」と読み、名所となっている「大菩薩峠」と区別しているそうです。
「大菩薩峠」を有名にしたのは、中里介山の同名の小説です。峠には、『大菩薩峠』の文学碑が建っていて、碑には『名作発想の地』と記されています。『大菩薩峠』は、剣士・机竜之助を主人公とする幕末を舞台にした時代小説です。一人の老巡礼が、武蔵国と甲斐国を結ぶ甲州裏街道(青梅街道)の「大菩薩峠」で、机竜之助に殺されるところから始まる長編です。
トレッキングは、上日川峠から歩き始め、唐松尾根の急坂を雷岩まで登り、先に最高地点の「大菩薩嶺」を往復しました。「大菩薩嶺」が見晴らしの利かない分、雷岩からの景色は素晴らしく、富士山から南アルプスまで、眺めは最高でした。
雷岩から大菩薩峠までの尾根道は、甲州側が開けていて富士山を眺めながら歩き、大菩薩峠に下るときに武州側の山並みを眺めることができました。
大菩薩峠から熊沢山(1978m)を目指し、上がり切った登山道から再び、美しい富士山の姿を眺めました。そこから石丸峠に下り、熊笹の峠道から森の中を抜けて上日川峠に下りました。
中里介山は、『大菩薩峠は江戸を西に距(さ)る三十里、甲州裏街道が甲斐国東山梨郡萩原村に入って、その最も高く最も険しきところ、上下八里にまたがる難所がそれです。』と書き出しています。そして、高僧が頂に菩薩の像を埋めて水清かれと祈願したところ、東に多摩川、西に笛吹川の流れとなり、人をうるおし田を実らせたという伝説を記しています。
その稜線から、いつも雄大な富士山を眺めながら歩くことのできた最高のトレッキングコースでした。